Pragmatic Play Sportsのスポーツ部門上級副社長、ギャレス・クルックが語る、スポーツベッティング市場で最も急速に成長する分野のひとつ「eスポーツベッティング」について。
Pragmatic Playスポーツ部門上級副社長 ギャレス・クルック氏による執筆
10年前、eスポーツベッティングはほんの一部の熱狂的ファンに向けた「マイナー市場」に過ぎませんでした。しかし今や、Esports World Cupのような世界大会が数百万人規模の視聴者を集め、ベッティング取引量も急増。eスポーツはもはや「サブカルチャー」ではなく、伝統的なスポーツと並ぶ巨大なエンターテインメントに成長しました。
いまや世界のeスポーツ市場は48億ドル規模。スポーツベッティングの中でも、最も急成長している分野のひとつです。
規制の整備、ブックメーカーの技術進化、そしてプレイヤーの嗜好の変化が、eスポーツベッティングを主流へと押し上げています。
今日のブックメーカーは、もはや“おまけ”としてeスポーツを提供しているわけではありません。プレイヤーは、人気タイトルごとに最適化されたオッズやライブベッティングを楽しめるようになっています。世界各国の規制当局もeスポーツ専用のルール作りを進めており、オペレーターが安心して投資できる環境が整いつつあります。たとえば英国では、賭博委員会がeスポーツを正式に「実際のイベントベッティング」と分類。既存のスポーツと同じ法的枠組みで提供できるようになり、eスポーツを独立したビジネスの柱として扱うブランドも増えています
特に注目すべきは、eスポーツが現代のベッティング世代――つまりZ世代やミレニアル世代の感覚にぴったり合っていることです。彼らはインタラクティブなデジタル体験に慣れており、即時性の高いeスポーツベッティングを自然に受け入れます。たとえばCounter-Strike 2で次のラウンドの勝者を予想したり、League of Legendsでチームが特定の目標を達成するか賭けたりといった短期ベッティング(マイクロマーケット)は特に人気です。こうした体験を成立させるには、公式ライブデータへのアクセス、高精度のリアルタイム技術、そして安定した更新システムが欠かせません。
eスポーツは単一の競技ではなく、さまざまなジャンルが共存する多層的な世界です。
戦術系シューターのCS2、MOBA系のDota 2、スポーツシミュレーションのFIFAなど、タイトルによってまったく異なる文化とプレイスタイルがあります。同じジャンル内でも特徴が大きく異なるため、eスポーツをひとまとめに扱ってしまうと、その魅力を正しく捉えられません。
メディア環境も独特です。
TwitchやYouTubeといった配信プラットフォームが中心にあり、チームだけでなく配信者やインフルエンサーも強い影響力を持ちます。デビッド・ベッカム、シャキール・オニール、セルヒオ・アグエロなど、伝統的なスポーツのスターもこの世界に参入しており、両者の境界はますます曖昧になっています。ベッティングオペレーターにとって、こうしたクロスオーバーは大きなチャンス。ライブ統計やハイライト、ファンコミュニティとの連動など、コンテンツ主導のエンゲージメント戦略が成功の鍵になります。
もちろん、Esports World CupやCS2 Majors、The International、League of Legends World Championshipなどのビッグトーナメントは、新規プレイヤー獲得や機能訴求の絶好の機会でもあります。
私が初めてゲームに触れたのはVIC 20で、その後はSpectrum、そしてAmigaでした。当時、それを持っていることが“中流家庭の証”だと思っていたほどです。Daley Thompson’s DecathlonやSpeedball、そして今も続くFootball Manager。100メートル走のためにジョイスティックを必死に連打した手の痛みを、今でも覚えています。それから30〜40年――まさかその「コンピューターゲーム」に賭ける時代が来るとは、当時は想像もしていませんでした。
Pragmatic Play Sportsでは、eスポーツを業界で最も大きな成長機会のひとつと捉えています。現在、6つの主要eスポーツタイトルを導入し、急拡大する市場をオペレーターが確実に取り込めるよう支援しています。
5〜10年前、私が英国でスポーツブックを運営していたころから「eスポーツが次の主役になる」と言われていました。当時の私は懐疑的でしたが、その見方はもはや通用しません。地域によって普及度は異なるものの、アジアではすでに主要な市場のひとつとして定着しています。
私たちの初期データからも、いくつかの興味深い傾向が見えてきました。
こうしたデータをもとに、私たちは製品開発にも反映を進めています。たとえば「eFootball」カテゴリーをライブベッティングのサッカーページに統合し、既存のスポーツファンとのクロスセルを促しています。
オペレーターにとって今重要なのは、「eスポーツを扱うかどうか」ではなく、「どう扱うか」です。従来のスポーツベッターとeスポーツネイティブの両方に響く体験を設計する必要があります。たとえばサッカーのページから自然にeスポーツへ誘導できる仕組みを作る一方で、熱心なゲーマーにとってはTwitchのようなUI体験が期待されています。その両方を満たすには、専用のランディングページや独自のUX設計が欠かせません。規制面でも、eスポーツベッティングはまだ「スポーツブックの標準」とは言えません。地域によっては提供が制限されている場合もありますが、状況は確実に変化しています。すでに公式トーナメント主催者やデータ提供者が存在しており、いずれはサッカーやテニスと同じように、正式な規制のもとで運営されるようになるでしょう。
これこそが次のフロンティアです。柔軟に挑戦し、新しい発想を取り入れるオペレーターが、ゲーム文化とともに育った新しい世代の顧客を獲得していくでしょう。Pragmatic Play Sportsは、そんなパートナーとともに、eスポーツの可能性を広げていきます。
eスポーツベッティングはまだ発展途上ですが、その未来は明るい。拡大し続ける観客層、進化する技術、そして長期的な成長が約束された市場。ジョイスティックからスポーツブックへ――この旅は、いま再び円を描くように繋がりはじめています。
* www.statista.com